それでも女子高校生らしくおしゃべり好きな涼子との会話の中で、その高校生活についてはかなり詳しく情報が得られていました。
また、彼女の家族についても同居しているという関係上、ずいぶんと詳しい話が聞けたりしました。
ここで判明したのは、画面に登場したのが中山りえという涼子の親友だけだったにも関わらず、涼子を取り巻く人物たちが一見普通そうに見えて実はかなり濃いキャラクターばかりであったということ（涼子自身も相当個性派ですが）。
で、これら登場人物を分析（？）してみようと思います。


本作品をゲームとして扱っていない筆者の、相当に強い思い込みと主観と妄想が入っていますので、この作品の世界観を壊されたくない方は閲覧をご遠慮ください。



【井上涼子】ＣＶ：藤野とも子

言わずと知れた本作品の主人公。11月４日生まれ。登場時は17歳。
ロマンチストで夢見がち、人一倍感受性が強く臆病、生真面目で律儀な性格がたたり、目立つことが嫌いな割には人の頼みを断れず結果的に目立ってしまう、そして何よりわがまま一番・気まぐれ全開と、おおよそ恋愛物語のヒロインかくあるべしというような性格の持ち主。なまじルックスがかわいいばっかりに、その猫の目性格に最も翻弄されたのが誰あろう主人公クン。ただ主人公クンにはそれを受け入れるだけの度量があった。

もともと親友たちとの高校生活を離れての渡米がイヤで、最初の大きなわがままを通して日本に残ったことが全ての始まり。ところが日本での同居先で過ごしていくうちに、次第に主人公クンに対する親愛の感情が芽生え始める。そのことが母親の一大事にも関わらず親元へ戻ることを逡巡してしまう一因ともなってしまい涼子の苦悩の日々が始まる。

その時に涼子の傍らで見事な指南役を果たしたのが主人公クンだったのは、涼子にとって最大の幸運ではなかったか。

主人公クンに寄せ書きをお願いする涼子。主人公クンの存在は涼子にとって特別な意味を持ち始めていた。 『ROOMMATE〜井上涼子〜』より

結局人公クンとの最初の同居生活はわずか２か月足らずで終わったが、その３ヶ月後の夏休みに一時帰国、一週間の同居生活が再び始まった。

この間、友人たちと親しく交流する一方で、再会した主人公クンとの距離はますます縮まり、涼子の主人公クンへの感情は恋愛のそれに変わっていく。ただこの時はまだ本人にそれが恋愛感情なのかどうかはっきりとしていない。『この人が好き』程度のものだったか。

自ら望んだ一時帰国。 わずか一週間の間、主人公クンとの距離は劇的に近づいた。 『涼子in Summer Vacation』より

その年の10月、いよいよ受験本番を迎えその準備のために帰国。過去最長の二人っきりの生活が始まったが、受験生である以上タテマエはどこまでも友達以上恋人未満。それでもハタから見れば二人はもう完全に恋人同士。

しかし涼子を待ち受けていたのは厳しい現実だった。
やはり日本とアメリカの間の往来で臨んだ影響か、結果的に涼子の受験は失敗。唯一合格した大学への進学か浪人か、あるいはアメリカでの留学かでこの上もなく悩むことに。追い打ちをかけるようにもたらされる母親の病状の再発。

苦悩した結果、出した答えがアメリカでの留学。

常識的に考えれば最も妥当な進路であったが、それをためらってしまうほど涼子の主人公クンへの想いは大きかった。涼子にとって主人公クンは、もはや単なる『支えてくれた同居人』では済まされない大きな存在となっていた。

『かけがいのないほど大事な人』

断腸の思いで新たな世界へ旅立っていった涼子と、静かに見送った主人公クン。お互い自慢できるくらい成長し、そして再会できることを切に願いたい。

大人への入り口で恋愛と将来との狭間に揺れ動いた涼子。 自分自身で出した答えを信じ、旅立っていった。 『風の輝く朝に』より

【中山りえ】ＣＶ：柳原みわ（現：星河舞）

橘南高校テニス部所属。涼子のクラスメイトで無二の親友。12月21日生まれ。登場時は17歳。
物おじしない唐竹を割ったような性格で、涼子と主人公クンが出会って１か月もしない間に、主人公クン家へ涼子とお泊りに来るツワモノでもある。その後何度か主人公クン宅を訪ねてきた。
兄が二人いることから、結構物事を冷静に見極めることができる、ある意味、涼子とは真逆のキャラクター。このことが涼子に対し的確な相談ができる一因となっている。ただし、勇み足もないことはない…。

いつも落ち着いたレクチャーを涼子に投げかけるりえだが、たまに感情的になって主人公クン宅へ来ることもある。 『涼子in Summer Vacation』より

当初主人公クンを兄のように見る涼子をたしなめることもあったが（本編には不出）、涼子の失恋事件ではその主人公クンに助けを求めるなど主人公クンに対する信頼は大きい。また山本正広ファックス騒動では、涼子に内緒で事の次第を打ち明けるなど、主人公クンと涼子との間を気遣うなどの配慮も見せている。
逆に主人公クンからも相談を持ちかけられることもあり、涼子の卒業式ボイコット発言事件では主人公クンの意を受けて涼子の説得に当るなど、主人公クンとはお互い強い信頼感を寄せあっている。

将来について語り合う二人。この時りえはすでに自分の進路をぼんやりながらも決めていた。 『風の輝く朝に』より

学校内ではいつも涼子と行動するらしく、学校の備品を涼子とともによく壊す。部活動含めて、少なくとも下校時までは二人はいつも一緒。（どちらかと言えば涼子がりえに引きずられてついて行っているっぽい）。
受験期ではお互いほとんど登校していなかったため、あまり顔を合わせることがなかったが、毎晩電話で話をするなど、その仲はとても良い。そのため主人公クンの情報は筒抜けで、彼にプライベートはない（こちらはどちらかと言えば涼子からの電話攻勢が強い面もあったっぽい）。
恋愛にも積極的で公認の彼氏がいるが、他愛もないケンカが絶えない模様。涼子からも『またケンカでもしたのかな？』などと言われている。

涼子への餞別。りえはここで旅立つ涼子を 見送った。 『風の輝く朝に』より

大学受験に早々に見切りをつけ、母親の助けになればとの思いで服飾関係の就職の道を選んだ。その決断の速さと強さに、涼子もただ感服するしかなかった。
主人公クンとの別れが近づき、取り乱した涼子を冷静に諭して落ち着かせるなど、何かと感情に走る涼子の良き相談相手であった。

涼子との別れの直前、手編みのセーターを渡すことで餞別とし、りえ自ら涼子の旅立ちを見送るようなことはしなかった。それは涼子の気持ちを最もよく知る彼女の、全てを主人公クンに委ねた配慮だったのかもしれない。

りえの餞別に喜ぶ涼子。涼子にとってりえは 最後までかけがえのない親友だった。 『風の輝く朝に』より

【山本正広】

橘南高校サッカー部所属。涼子のクラスメイトにして最大の天敵。画面には出てこずセリフもないが、作品中の存在のインパクトは強烈で、おそらくは本作品最強のキャラクター。

涼子に横恋慕し、涼子の失恋をきっかけにファックスでラブレターを送ったり、どこで聞きつけたのか、夏休みに一時帰国した涼子へプレゼントを送ってみたりと、とにかく大暴れ。ストーカーに見紛うようなちょっかいをかけるところからして既に思考レベルが小学生男子のそれである。

涼子から怒りの電話を受けるも悪びれることなく逆に映画に誘う強心臓と、その行動が何度も涼子の逆鱗に触れたにも関わらず全くダメージを受けない驚異的な打たれ強さを持つ。

反面、国立大学を受験するほどの秀才で、サッカー部ではエースストライカー、陽気で教師たちの評判もよく女生徒たちにも人気があるいわゆる文武両道。卒業式では卒業生代表の答辞を受け持つも関西芸人張りのアドリブを交えて暗に涼子への告白を行い、涼子を絶句させた（周りは大喜びだったらしい）。

本来なら主人公クンの恋敵となってもおかしくない人物ながら、年上の余裕からか主人公クンに嫉妬のような感情は全くなく、逆に『なんだ、正広くんって優等生じゃないか』と言わしめた。その主人公クンの受けも良かったことが癪に障ったのか、涼子は頑として主人公クンの正広への好意的な態度を受け入れなかった。

卒業式後のパーティーで涼子へマジ告白したものの、結局涼子からは何の返事ももらえなかった。
サッカーの実力は相当なものだが自身の限界は知っており、サッカー推薦などは一切断り(本編には不出)北海道の国公立大学へ進学した。
本シリーズで最も画面に登場して欲しかった一人である。



【岡島慎悟】

橘南高校テニス部所属でキャプテン。文武両道、明朗快活、品行方正と非の打ちどころがない模範生･･･と言いたいが、その実は朴念仁のテニスバカ。

涼子のかいがいしい（？）アプローチにも関わらず、その鈍感さから結果的に涼子を振ってしまうことに。そのせいで涼子はドン底落ち込んだが、幸か不幸か同居人の主人公クンに励まされ、吹っ切れるきっかけともなった。
ある意味、涼子と主人公クンとの橋渡し役を演じた功労者。

自他ともに認めるカノジョがいるため、涼子の好意もただの親切としか映らなかったのかもしれない。自覚のなさとニブい感性とが災いした、実に罪作りな男である。ただ、この涼子失恋騒動にはりえも一枚絡んでいたので、全ての責任を慎悟に押し付けるのはいささか気の毒。

テニスの腕は全国級で、インターハイベスト８の実力を持つ。テニスのスポーツ推薦が決まっており、高校卒業後は大学特待で進学した。失恋を思い出にできた涼子にとっては卒業まであこがれの対象であり続けた。

客観的に見てもかっこいいヤツなのだが、卒業パーティーで散々飲み食いした挙句、学校に戻りナイターで仲間たちとお別れテニスをプレイした、やっぱり最後までテニスバカ。

涼子の家族

【井上剛】

涼子の7歳年下の弟。３月生まれ。登場時は９歳。

環境への適応能力がずば抜けており、姉と離れて両親と共にニューヨークへ住むことになっても全く悲観することなく、アメリカの生活になじんでしまった。
その一方で、アメリカで飼い始めたゴールデンレトリバーに『リョウ』と名付けるなど、遠くにいる姉を慕う態度も見せている（ただの面白半分の可能性もあるが･･･）。

当たり前だが、行動原理は子供そのもので、渡米前にＪリーグの中継録画を涼子に強く頼むほど夢中になっていたサッカーをあっさり捨て、今では姉の気苦労どこ吹く風で野球とバスケットボールに熱中している。

剛のためにＪリーグの試合を録画する涼子。 このころの剛は、鹿島アントラーズのジーコの ファンだったらしい。 『ROOMMATE〜井上涼子〜』より

また落ち着きがないらしく、夏休み前に涼子がニューヨークに戻ってきた際のミュージカル観劇を、じっとしていられないという理由で知り合いに預けられふて腐れたこともある。そもそも元気いっぱいの子供にミュージカルは無理と思うのだが･･･。

涼子と主人公クンとの会話の中で、兄妹に比べ姉弟は『得るものがない不毛な関係』と涼子から言われてしまっているが、当の本人は何ら気にすることなくアメリカ生活を謳歌している模様。
姉に似ず、なかなか強靭な子である･･･が一方で雷が大の苦手という弱点を持っている。



【涼子の父親】

1996年末頃にニューヨーク勤務を命じられた商社マン。１月生まれ。かつては仕事の鬼だったらしいが、心機一転、家庭を顧みるようになった矢先に海外転勤となった不運な人。ニューヨーク州スカースデールに居を構える。英語に極めて堪能で、涼子の英語好きがこの影響なのは間違いない。

日本に残ると言い張る涼子の意思を尊重したまではよかったが、その手段として娘一人を友人宅に預けるという荒業を躊躇なくやってのけた隠れたツワモノ。

基本的に子供たちには放任主義で通し、また子供たちもそれに応えているので結果往来というべきか。涼子の受験に対してもとやかく言わず、本命失敗後の涼子を励まし且つ、主人公クンへの感謝も忘れないなど、一廉の人物であることがうかがえる。



【涼子の母親】

娘と離れて暮らすことに最後までなじめなかった悲運の人。２月生まれ。

もともと精神的に弱いところがあり、涼子の進路の岐れ目でたびたび病床に臥せってしまい涼子を悩ませ続けた。しかしそれは娘を思うあまり起きてしまう症状であり、涼子もそれを承知しているが為に葛藤に苛まれることとなる。

最終的に涼子は、自身の夢のためにアメリカの両親のもとに戻っていったが、それは自身が大人になるまで母親を安心させるための決心でもあったに違いない。

進路のことで深く悩み続けていたところに届け られた、母親倒れるの知らせに放心状態となる 涼子。 卒業後の渡米が、再会が約束されない『別れ』 となることの怯えから、これまでにないほどの 葛藤に苦しんだ。 『風の輝く朝に』より

【涼子の叔父】

涼子の父親の弟。フリーライターで独身。30歳半ばと推測。涼子の知りたがり蘊蓄話の源。
涼子にとっては何よりの物知り箱である一方、進路に悩む場面で必ず相談に乗ってくれる頼もしい存在でもある。

学生時代に、涼子と同じような恋愛をし、悲しい別れ方をした経験を持つ。受験後の進路で思い悩む涼子に対し、その自身の恋愛を重ねて涼子自身で方向性を見出させようとした。

登場回数は少ないが、涼子の人生の岐路に必ず現れるため、顔やセリフがない割には印象が強い。
またイレギュラーに涼子をよく食事などに連れ出すため、山本正広とは違い主人公クンにとっては一種の恋敵のような存在でもあった（←妄念です。念のため）。



【母方の涼子の祖父母】

両名とも健在でカナダのバンクーバーに住んでいる。これだけで充分セレブ。
ところが、である。
実は元々東京在住の大地主で資産家。高級外車を乗り回し孫の顔を見に来るほどの超セレブ。
カナダの大自然に憧れてバブル期に土地屋敷を売り払い莫大な資産を片手にバンクーバーへ移住してしまった。バブルが弾ける直前の売りであったためその額は相当なものだったらしい。
さらに、である。
小型機やクルーザー操縦のライセンスを持っており、バンクーバーでは水上飛行機での遊覧飛行を楽しむなど悠々自適すぎる生活を送っている模様。
控えめで病弱な涼子の母親の両親とは思えない、全くもってパワフルな老夫婦である。

バンクーバーから届いた祖父母からの手紙を読む涼子。 これぞまさしく『カナダからの手紙』 『ROOMMATE〜井上涼子〜』より