ローズマリー

『お茶にしない？』
「ん？そうだね」

『ローズマリーのハーブティーだよ』

「あいかわらずハーブが好きだね」
『うん。冬場はハーブもお休み中だから、あまり摘んじゃいけないんだけど、でもローズマリーは常緑だ
　からいいの。たくさん育ててるし』
「好きなんだ。ローズマリー」
『うん。ハーブの中でいちばん好き。匂いにクセがあるから、人によって好ききらいがあると思うけど』
「お茶のほかに、どんなふうに使うの？」
『ローズマリー？ハーブソープとか、お肉の臭み消しとかいろいろ。ワインに入れて湯せんすれば、ロー
　ズマリーワインになるよ』
「いろいろ使えるんだ」
『うん。化粧品なんかにも使われているし･･･。あ、ねえねえ。最初の化粧水はハンガリー水って言っ
　て、ローズマリーから作られたって知ってる？･･･ハンガリーの王妃様が、若さを取り戻すために、
　ハーブのエキスをお肌にすりこんで使ったんだって。そのときのハーブがローズマリーだったんだっ
　て』
「ふ〜ん」
『だからローズマリーって、「若返り」とか「不老不死」を象徴するハーブなの。花言葉は「あなたの存
　在は私をよみがえらせる」･･･すてきな花言葉でしょ』
「ほんとに効くのかな？」
『うん。殺菌力はハーブのなかでも強いほう。リフレッシュ効果もあって、脳の働きを高めてくれるんだ
　って。だから受験生のお守りにも使われているの。私も、いつもローズマリーの枝を持ち歩いてた』
「へえ･･･」
『ローズマリーのお話って、ほかにもいろいろあるよ。１月21日の夜に、ローズマリーを靴に入れてベッ
　ドの脇に置いて、神様にお祈りして寝ると、未来の結婚相手と夢で会えるとか』
「やってみた？」

『えっ？へへ、実はこないだの１月21日にやってみたんだけど･･････』 「･･････結果は？」 『ふふっ･･･ちゃんと、私の好きな人の夢が見られたよ』 「ほっほ〜、それはそれは」 『誰だか気になる？』 「（僕のことだと信じたいね）」

『･･････あとね、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」で、仮死状態になったジュリエットのそば
　に捧げられていたハーブもローズマリーなの。この場合のローズマリーの花言葉は「約束」で、二人が
　誓った「結婚」を暗示してるって本に書いてあった』
「ふ〜ん」
『すてきなお話がいっぱいあるでしょ？だから私、ローズマリーが好きなの』
「（あいかわらずハーブの知識はすごいな）」
『さて、ごちそうさま。カップは置いといていいよ。あとで片づけるから』


涼子が主人公クン家で大事に育てているハーブ･･･の中で特に思い入れが強いローズマリーについてのハーブ談義です。

主人公クンではありませんが、ハーブに関してはとにかくよく知っていること！
シェイクスピアはともかく、ハンガリー水のエピソードなんかは、本当に知っていなければ誰も全く分からないことでしょうし。
花言葉も再登場。でも今回はさらっと流す程度。主題は後述。

ローズマリーが、他のハーブに比べ殺菌力が高いというのは聞いたことがありました。以前トルコを旅行した際、食事で入った大衆レストランではテーブルの上に鉢植えが置いてありました。『これ何？』と聞いた答えが『これは虫除け用のハーブ』というのが印象に強く残っています。今思えば、その時の鉢植えはローズマリーだったのかもしれません。
昔の人たちは経験則で薬草の効能効果を知っていたんですね。その意味では今よりずっと自然と密接だったんでしょう。

そしてロマンチスト涼子、面目躍如のハーブおまじない。
既に恋人モードに入っている二人には、どちらかがドキッとするような謎かけをしても平然と受けて返せるようになっています。
そしてそれ以上深入りはせず、ごく自然に次の話題へ。

成長したというのか、分かり合えるようになったというのか、第三者的に見ると羨ましい限りです･･････